予防接種
予防接種

予防接種(ワクチン)は、病原体そのものではなく、その一部や弱毒化した形をあらかじめ体に示しておくことで、免疫が素早く働けるよう準備させる仕組みです。実際の感染を経験しなくても、体は「これは敵だ」と判断する力を身につけ、本当に感染したときにはすぐに抗体を動員できます。
たとえば、麻疹(はしか)、おたふく、水痘、百日咳、髄膜炎、重い肺炎、ロタウイルス胃腸炎など、ワクチンで予防できる病気(VPD:Vaccine Preventable Diseases)は20種類以上あります。これらは自然感染すると重症化しやすいものも多く、特に小さなお子さまでは命に関わることもあります。ワクチンで事前に免疫をつけておくことで、こうした重い症状や後遺症を大幅に減らすことができます。
副反応(接種部位の赤み・腫れ、発熱など)が出ることはありますが、多くは一時的で軽く、自然感染で起こる症状とは比べものにならないほど、安全に免疫を得られる方法です。
「予防できる病気は、予防しておく」ことが、お子さまを守る一番確実な手段です。
赤ちゃんのワクチン接種は、生後2ヵ月という、まだ産後の大変さが続く時期から始まります。その後も1歳までたくさんの予防接種があります(5種混合・肺炎球菌・B型肝炎・ロタウイルスワクチン・BCG・日本脳炎)。乳児健診では予防接種が順調に進んでいるか、その都度確認していきます。
1歳のお誕生日を迎えると、MR(麻しん・風しん)、水痘、おたふくという大切なワクチン接種が待っています。また肺炎球菌・5種混合追加は、これまでの免疫を強固にする意味で重要です。ちょうど風邪を引きやすい時期でもあるため、予定通りに進まないことも多くありますが、元気なタイミングを見つけてできるだけ早く接種することが大切です。
小学校入学前に行う予防接種として、麻しん風しん(MR)ワクチン2期やおたふくかぜワクチンに加えて、ジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)やポリオの追加接種が推奨されています。これらの感染症に対する免疫は、乳幼児期に接種したワクチンだけでは徐々に抗体価が低下してくることがわかっており、学童期に入る前にもう一度免疫を補強しておくことが大切です。入学準備で忙しく、つい忘れてしまいがちな時期でもあるため、早めの確認をおすすめします。
また、小学校高学年になるとジフテリア・破傷風(DT)、中学生ではヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが標準的なスケジュールとして続いていきます。これらはいずれも、将来的に重い病気を防ぐための重要な予防接種です。
いずれも、お子さまを将来にわたって守る大切なワクチンです。日々の忙しさや、頻繁に風邪を引いてしまうなど「気づいたら時期を逃してしまった」「スケジュールが良く分からない」こともあると思います。当院ではいつでもワクチンスケジュールの相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にご相談ください。
ワクチンを受けたあと、体が免疫をつくる過程でさまざまな反応が見られることがあります。これらを「副反応」と呼びます。
接種後に熱が出ることがあります(報告によっては数%~半数ほど)。これは体が免疫をつくっているサインで、多くは接種してから1日以内に上昇し、2日程度で自然に下がります。腕の注射部位が赤く腫れていることもよくあります。
ただし、生後3ヵ月未満のお子さまは、感染症であった場合に重症化しやすいため、発熱があれば早めに医療機関を受診してください。
注射した場所が赤くなったり腫れたりするのはよく見られる反応で、ワクチンによっては30~60%程度にみられると言われています。ほとんどの場合は治療の必要はなく、3~4日ほどで落ち着きます。
まれに腫れが肘を越えるほど強い場合は、塗り薬を使うことがあります。また、触ると小さなしこりのように感じることがありますが心配はいりません。時間とともに小さくなっていきます。まれに1~2ヵ月ほど残ることもあります。
注射で体内に異物が入るため、アレルギー症状が出る可能性はありますが、ワクチンで重いアレルギーが起こることは比較的まれです。
症状としては、じんましん・咳・ぐったりする(血圧が下がる)などがあり、多くは接種後30分以内に現れるとされています。院内でしばらく様子を見るのはそのためです。
以前は卵アレルギーのお子さまにインフルエンザワクチンやMRワクチンの接種を控えるよう言われていた時期がありましたが、現在は通常通り接種可能とされています。不安な場合はお気軽にご相談ください。
生ワクチンは弱くした病原体を使うため、まれに潜伏期間を経たあとにその病原体に由来する軽い症状が出ることがあります。ただし、通常は一時的で重くなることはほとんどありません。特別な治療も必要ないのが一般的です。
その他、明らかな体調不良や感冒症状が目立つ場合は診察を行い、ご家族と相談の上延期とする場合もあります。
※予診票が手元にある場合は、体温以外はあらかじめ記載しておいてください
乳幼児に多い髄膜炎や喉頭蓋炎など、命に関わる細菌感染を引き起こします。ワクチン導入後、重症例は大幅に減少しています。
肺炎や髄膜炎、敗血症の原因となる細菌です。特に小さなお子さまでは重症化しやすく、ワクチンにより多くの重い感染症を防ぐことができます。
肝炎や肝硬変、肝がんの原因となるウイルスです。母子感染だけでなく、日常生活の中での接触でも感染することがあります。
激しい嘔吐と下痢を起こし、脱水による入院が必要になることもあります。ワクチンで重症化を防ぐことができます。
いずれも重症化しやすく、ワクチンでしっかり予防することが重要です。
重い結核(結核性髄膜炎や粟粒結核)を防ぎます。日本では依然として結核予防が必要です。
集団生活が始まる前に、確実に免疫をつけておくことが重要です。
発疹と発熱を伴う感染症で、まれに肺炎や脳炎などの合併症を起こします。ワクチンで重症化を防ぐことができます。
蚊が媒介する脳炎で、重い後遺症が残ることもあります。日本の気候では毎年一定のリスクがあるため、予防が推奨されています。
耳の下が腫れて痛む感染症です。合併症として片側性の難聴(ムンプス難聴)があり、一度起こると回復が難しいため、ワクチンによる予防が推奨されています。
発熱や全身症状を引き起こし、肺炎や脳症に進展することがあります。毎年の接種で重症化を防ぎます。
将来の子宮頸がんの原因となるHPV感染を防ぐワクチンです。男女ともに接種が推奨されており、思春期に重要な予防接種のひとつです。
重症化を防ぎます。流行状況に応じて接種が推奨されています。