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インフルエンザの流行が始まり、ワクチン接種のシーズンになりました。
この時期、診察室では保護者の方から、ワクチンとアレルギーについてさまざまなご質問をいただきます。
「卵アレルギーがあるけれど、インフルエンザワクチンは接種できる?」
「喘息があるけれど、鼻から接種するフルミストは大丈夫?」
「ワクチンに含まれる添加物でアレルギーが起こることはある?」
今回は、こうした疑問について、最近の研究報告も交えながらご紹介します。
アレルギーがあるとワクチンは接種できない?
ワクチンには、病原体に対する免疫をつけるための「抗原」のほかに、品質を保つための安定剤や保存剤、製造過程に由来する微量の成分などが含まれることがあります。
アレルギー反応の原因となり得る成分には、次のようなものがあります。
- 卵由来のタンパク質
- ゼラチン
- 製造過程で使用される一部の抗菌薬
- PEG(ポリエチレングリコール)など、一部のワクチンに含まれる添加物
ただし、これらの成分がすべてのワクチンに含まれているわけではありません。
また、アレルギーの原因となる食品や成分が製造過程で使用されていても、実際にワクチンに含まれる量はごく微量である場合があります。
大切なのは、何のアレルギーがあるのか、これまでにどのような症状が出たのか、接種するワクチンにどのような成分が含まれているのかを確認することです。
卵アレルギーがあってもインフルエンザワクチンは接種できる?
インフルエンザワクチンの多くは、製造過程で鶏卵を使用しています。
そのため、卵アレルギーのあるお子さんの保護者の方から、接種についてご相談をいただくことがあります。
しかし、これまでの研究では、卵アレルギーがあるという理由だけで、インフルエンザワクチンを一律に避ける必要はないことが示されています。
2012年に報告された研究では、卵によるアナフィラキシーの既往があるお子さんを含む、重症卵アレルギー児143人について、不活化インフルエンザワクチンの安全性が検討されました。
その結果、ワクチンに起因するアレルギー反応は認められず、分割して接種する必要性も示されませんでした。
また、海外の研究では、卵アレルギーのあるお子さん779人に対して、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(フルミストと同じ種類のワクチン)を接種したところ、ワクチンに起因する重篤な有害事象や入院は認められませんでした。
この研究には、卵によるアナフィラキシーの既往があるお子さんも含まれていました。
このように、卵アレルギーとインフルエンザワクチンの安全性については、多くの研究が積み重ねられています。
フルミストとゼラチンアレルギーの関係
フルミストは、鼻の中に噴霧して接種するインフルエンザワクチンです。
注射を使用しないことから、注射が苦手なお子さんにとっても選択肢のひとつとなっています。
一方、フルミストには安定剤として精製ゼラチンが含まれています。
ゼラチンは、ゼリーやグミなどの食品にも使用される成分ですが、ゼラチンに対するアレルギーがある場合には注意が必要です。
ワクチンに含まれるゼラチンは、製剤によってはミリグラム単位で含まれることがあり、まれに即時型アレルギー反応やアナフィラキシーの原因となることが知られています。
ゼラチンアレルギーがあるお子さんでは、フルミストの接種を避ける必要があります。
ゼラチンを含む食品でじんましんなどの症状が出たことがある場合や、過去の予防接種で強いアレルギー反応を起こしたことがある場合は、接種前に必ずご相談ください。
喘息があってもフルミストは接種できる?
気管支喘息のあるお子さんでは、フルミスト接種後の喘鳴や喘息発作が心配されることがあります。
フルミストは弱毒化したインフルエンザウイルスを使用する生ワクチンであり、従来、喘息のあるお子さんへの接種については慎重に考えられてきました。
一方、近年は新しい研究結果も報告されています。
2025年に小児科学の専門誌『Pediatrics』に掲載されたシステマティックレビューでは、喘息や反復性喘鳴のあるお子さんに対する経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの安全性が検討されました。
その結果、5~17歳の喘息児では、注射ワクチンと比較して喘息発作が明らかに増加することは認められませんでした。
また、中等症から重症の喘息児についても、喘息増悪リスクの明らかな増加は示されませんでした。
ただし、低年齢のお子さんに関する研究では、エビデンスが十分ではない部分もあります。
喘息がある場合に大切なのは、現在の喘息のコントロール状態です。
最近喘息発作を起こしている、咳や喘鳴が続いている、喘息のコントロールが不十分であるといった場合には、フルミストの接種は慎重に判断する必要があります。
お子さんの喘息の状態やこれまでの経過を確認し、注射ワクチンも含めて適切な接種方法を選択することが大切です。
ワクチン接種後に症状が出たら、アレルギー?
ワクチン接種後に発熱や発疹が出ると、「ワクチンアレルギーでは?」と心配されることがあります。
しかし、接種後に起こった症状が、すべてアレルギー反応というわけではありません。
ワクチン接種後には、免疫が働くことによって発熱や接種部位の腫れなどが起こる場合があります。
一方で、接種後短時間のうちに、全身のじんましん、繰り返す嘔吐、咳や呼吸困難、ぐったりするなどの症状が現れた場合には、アナフィラキシーを含む重いアレルギー反応の可能性があり、速やかな対応が必要です。
ワクチン接種後にアレルギーが疑われる症状が出た場合には、症状の内容、接種から症状が出るまでの時間、使用したワクチンの種類などを確認します。
必要に応じて専門的な評価を行い、次回のワクチン接種について検討します。
一度症状が出たからといって、必ずしも今後すべてのワクチンが接種できなくなるわけではありません。
アレルギーがあっても、安全に予防接種を受けるために
予防接種は、お子さんをさまざまな感染症から守るための大切な手段です。
食物アレルギーや気管支喘息があるお子さんでは、接種について不安を感じることもあると思います。
しかし、アレルギーがあることだけを理由に、必要な予防接種を避けてしまうことは望ましくありません。
大切なのは、アレルギーの種類やこれまでの症状、現在の体調、ワクチンの成分などを確認し、お子さん一人ひとりに合った方法を考えることです。
松陰こどもクリニックでは、食物アレルギーや気管支喘息などの診療とともに、予防接種についてのご相談も行っています。
「アレルギーがあるから接種できない」ではなく、「どうすれば安全に接種できるか」を一緒に考えていきたいと思います。
ワクチン接種について気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
参考文献
- Greenhawt MJ, et al. Safe administration of the seasonal trivalent influenza vaccine to children with severe egg allergy. Ann Allergy Asthma Immunol. 2012;109:426–430.
- Turner PJ, et al. Safety of live attenuated influenza vaccine in young people with egg allergy: multicentre prospective cohort study. BMJ. 2015;351:h6291.
- Kelso JM. The adverse reactions to vaccines practice parameter 10 years on—what have we learned? Ann Allergy Asthma Immunol. 2022.
- Safety of LAIV Vaccination in Asthma or Wheeze: A Systematic Review and GRADE Assessment. Pediatrics. 2025;155(5):e2024068459.
※実際の接種可否は、国内で使用するワクチンの電子添文およびお子さんの状態に基づいて判断します。




